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記録: 「古いほど価値がある」は違う?家具販売員が教えるヴィンテージ家具の基本【資産形成】

「古いほど価値がある」は違う?家具販売員が教えるヴィンテージ家具の基本【資産形成】

「古いほど価値がある」は違う?家具販売員が教えるヴィンテージ家具の基本【資産形成】

(2025年12月24筆加修正)

「古いから価値がある」。
ヴィンテージ家具について、そう語られることは少なくありません。

しかし実際の市場では、古さだけでは価値は決まりません。
評価され続ける家具には、必ず「時間」「文脈」「選ばれてきた理由」があります。

本記事では、家具販売の現場と市場の変化を踏まえながら、
ヴィンテージ家具がどのように価値を獲得し、なぜ資産として語られるようになったのかを整理していきます。

単なる価格や流行ではなく、
「残る家具」と「消えていく家具」を分ける判断軸を持ちたい方へ。
まずは全体の流れを、以下の目次で確認してみてください。

「ヴィンテージ家具」という言葉を聞いたことはありますか。

ヴィンテージ家具とは、単に古い家具のことではありません。
年月を重ねながらも価値を失わず、むしろ魅力を深め、長く人を惹きつけ続ける家具を指します。

ヴィンテージ家具を選ぶことは、結果として、良質な家具を適正な価格で手に入れるための合理的な選択でもあります。

住まいにオリジナリティと奥行きをもたらすだけでなく、近年では「資産」としての側面も語られるようになってきました。たとえ大量生産されたプロダクトであっても、ヴィンテージとして市場に残っている時点で、それはすでに希少性を帯びています。

さらに、既存の家具や道具を使い続けることは、新たな資源消費を抑えるという意味でも、持続的な選択と言えるでしょう。
では、その輝きはどこから生まれてくるのでしょうか。

価値が残りやすい家具には共通点があります。

それは「作り(品質)」「来歴・文脈」「流通量(需要と供給)」の3点です。
本記事は、この3つを軸に、ヴィンテージ家具を“資産として語れる条件”まで整理します。

ヴィンテージという言葉の本来の意味

ヴィンテージという言葉は、ワインの原料となる葡萄の「収穫年」を指します。本来、「古い」という意味ではありません。
昨年収穫された新しいワインにもヴィンテージは存在し、一般的にはラベル表記が15年以上前のものが「オールドヴィンテージ」とされることが多いようです。

イランやトルコなどで、伝統的な綴れ織りとして製造されている絨毯「キリム」の世界では、30年を経たものをオールドと呼びます。
自動車の場合は「クラシック」という言葉が用いられ、日本では「骨董」という表現の方が馴染み深いかもしれません。

このように、ヴィンテージの定義は分野によって異なりますが、家具の場合は、製造から30年以上経過したものをヴィンテージ家具、100年以上経過したものをアンティークと呼ぶのが一般的です。

なお、「ヴィンテージ(Vintage)」は英語で、フランス語では「ミレジム(Millesime)」、イタリア語では「ヴェンデミーア(Vendemmia)」と呼ばれています。

「古いほど価値があり、高価である」と思われがちですが、実際にはその先入観が当てはまらないケースも少なくありません。
そこで本記事では、家具好きであればいつかは向き合うことになる「ヴィンテージ家具」の基本について整理していきます。

ここからは、私自身が市場の中で見てきた具体的な事例を交えながら、この流れをもう少し立体的に見ていきます。

文脈が強いものほど、時間によって価値が育つ?

誰がデザインしたプロダクトなのか。
どの工房で制作されたのか。
一般向けに販売されたものなのか、それとも公共施設向けに納められた家具なのか。

こうした背景の違いが、ヴィンテージ家具の評価を大きく左右します。

さらに、いわゆる試作品(プロトタイプ)は、量産品とは異なる位置づけにあり、資料的価値や希少性の観点から、より高い評価を受ける傾向があります。

どうしてヴィンテージ家具は高いの?

私の見聞きしてきた範囲では、ハリウッドのスターや富裕層のライフスタイルの変化も、ヴィンテージ家具高騰の一因だと感じています。

かつてはロココ様式やクラシック家具に代表されるアンティーク家具で暮らしていた層が、時代の空気に合う、より構造的でモダンな家具へと関心を移しました。その中で、ミッドセンチュリー期のイームズをはじめ、さらに遡ってル・コルビュジエやジャン・プルーヴェといったデザイナーの家具が再評価され、集中的に買い集められていったのです。

こうした流れは、ヴィンテージ市場だけに留まりません。

ヴィンテージ家具の価値が押し上げられることで、その系譜に連なる現行プロダクトの評価も連動し、結果として2000年以降、現行品の家具価格もほぼ毎年のように上昇し続けています。

ヴィンテージ家具選びで気をつけてほしいこと

質の良いものを探しましょう。
古い家具だからといって、必ずしも品質が良いとは限りません。劣悪な素材や粗悪な仕上げの家具も、どの時代にも存在します。ヴィンテージ家具も例外ではなく、「よくできたもの」と「そうでないもの」は明確に分かれます。
そのため、自分が探している年代やデザイナー、ブランドについて、あらかじめ調べておくことが重要です。

一方で、細かな傷を過度に気にする必要はありません。
程度の良い中古家具を選ぶことは大切ですが、表面の小さな傷の多くは補修が可能です。市場に出回っているヴィンテージ家具の多くは、専門的な手入れによって十分に美しく仕上げ直すことができますし、本当に優れた家具であれば、適切な修復を施すことで、むしろ表情を深めていきます。

近年のヴィンテージ家具コレクターの広がり

40年代から60年代のミッドセンチュリー期にデザインされたヴィンテージ家具を求め、現在では世界中のバイヤーがデンマークやフィンランドを訪れています。その動きがさらに拍車をかけ、価値が上昇しているという印象を受けます。
著名なデザイナーが手がけたプロダクトも、状態の良いものから市場から姿を消し、価格は変動を繰り返しながら、その次の時代に生まれたデザインプロダクトが「作品」として文脈を形成し、高騰していく流れが見られます。ある種のブームと呼んでも差し支えない状況かもしれません。

当初は一時的なブームとして落ち着くのではないかとも考えていましたが、実際にはアメリカ、ヨーロッパ、日本にとどまらず、ここ2~3年では韓国や中国のバイヤーも増え、状態の良い作品を入手することは年々難しくなっています。
この20年で価格は2~3倍に上昇し、その中には当時の想定をはるかに超え、50倍近い価格が付いた作品も存在します。

象徴的な出来事として、2006年のサザビーオークションにおいて、マーク・ニューソンがデザインしたIDÉE初期の《ロッキード・ラウンジ》が、約85万ドル(当時約1億円)というハンマープライスを記録したことを覚えている方も少なくないでしょう。当時、歴史上もっとも高価な家具として注目を集めました。

こうした評価は、単にデザインが優れているという理由だけではありません。
北欧を代表するデンマーク家具に見られるように、デザイナーと工房が協働しながら制作されてきた背景から、品質は非常に高く、使用されている素材そのものも、近年では価値を増しています。加えて、マホガニーやチーク材といった希少材を用いた家具は、現在では輸入自体が難しくなりつつあります。

資産価値があるヴィンテージ家具は、どのように評価されてきたか

ここで言う「資産形成」は、株のように増やす話というより、価値が落ちにくい選び方の話です。買う前に「何が価格を支え、何が崩すのか」を理解しておくことで、失敗確率を下げられます。

市場の法則として、需要と供給のバランスも大きく関係しています。
フィン・ユールやハンス・J・ウェグナーといったデザイナーの名前を、すでに耳にしたことがある方も少なくないと思います。彼らが手がけたプロダクトは、製造された時期やアイテムによって工房を変えながら、長い時間をかけて制作され続けてきました。

これは企業間の買収の話にも通じる部分があります。細かな説明は控えますが、資産価値という観点で見ると、当時から制作数が限られていたものや、特定の公共施設のために制作されたといった背景を持つ作品には、そうしたストーリーが加わり、価格にも反映されていると考えています。

ここで、もうひとつ大切な「文脈」の話をしておきたいと思います。

2019年に国立西洋美術館本館で開催されたル・コルビジェ展を例に挙げると、理解しやすいかもしれません。

コルビュジエは、甥であるピエール・ジャンヌレ、そしてシャルロット・ペリアンとともに、三人で多くのプロジェクトを手がけていました。彼らのデザインの多くは公共施設向けであったため、現在のように評価が定まる以前には、処分されてしまったものも少なくなかったと聞いています。1990年代に実際に買い付けを行っていた方の話では、現在の評価からは想像できないような価格で取引されていたそうです。

彼らを起点に考えると、前川國男氏の紹介でル・コルビュジエの建築設計事務所に入った坂倉準三氏、また日本の商工省により輸出工芸指導の装飾美術顧問として招聘され、シャルロット・ペリアンと親交の深かった柳宗理氏へと、その文脈は日本にもつながっていきます。

こうした背景をもとに、作品は意味づけされ、価値を与えられてきました。そこには西洋のオークションハウスや、影響力のあるディーラーの存在も関わっているでしょうし、美術館の果たしてきた役割も無視できません。

このような文脈は、現代を生きるプロダクトデザイナーにも確かに存在しています。
誰に影響を受け、どの思想を受け継ぎ、どの位置に立っているのか。そうした視点も、作品を見るうえでは重要だと考えます。

室内をヴィンテージ家具で彩るのも、蒐集を楽しむのもひとつの在り方ですが、文脈を意識しながら現代のプロダクトを眺めてみるのも、また違った楽しさがあります。

アメリカを代表するチャールズ&レイ・イームズやジョージ・ネルソン、北欧ではフィン・ユール、アルネ・ヤコブセン、ヴェルナー・パントン、そしてニューヨークで脚光を浴びた、私の好きなデザイナーであるポール・ケアホルム。
彼らが残した家具もまた、それぞれの文脈の中で意味と価値を与えられてきたように思います。

ちなみに、私が初めてジャン・プルーヴェの家具を目にしたのは、2005年の春でした。
パリ・バスチーユにあるギャラリー「patrickseguin(パトリック・スガン)」が、東京・青山の10 corso como COMME des GARÇONS(ディエチ・コルソ・コモ・コム デ ギャルソン)内で展示を行っていたときのことです。

プルーヴェやペリアンの家具が並び、その多くがすでに売約済みだった光景は、今でもよく覚えています。
100万円を超える家具の存在を、現実として実感した瞬間でした。翌年に東京・谷中で開催されたプルーヴェ・ハウスの展示も、忘れられない体験のひとつです。

世界で評価される、日本人デザイナーのヴィンテージ家具

一番著名なデザイナーは、やはり倉俣史朗氏の仕事になると考えます。
代表作である、世界に56脚しか存在しない椅子「ミス・ブランチ」は、現在5,000万円以上の価値があるとも言われています。

アートとプロダクトの垣根を超え、特定の潮流や様式に回収されない不思議な存在でありながら、フィリップスやクリスティーズといった第一級のオークションハウスでも取り上げられ、世界各国の美術館やコレクターが競り合う作品も少なくありません。

また、2018年にアメリカ・シカゴで開催された オークションハウス「wright20」 において、コム デ ギャルソンの椅子が1脚100万円を超えるハンマープライスを記録したことにも、強い印象を受けました。

この評価の流れは、2021年以降も継続しているように感じています。
個人的には、イサム・ノグチ氏の文脈をとりわけ重要視しており、外国人ディーラーからの問い合わせが多い作品としては、倉俣史朗氏の作品をはじめ、川久保玲氏、初期のIDÉEのプロダクトが挙げられます。

イサム・ノグチ氏が手がけた照明「AKARI」に見られるサインについてですが、一般には “I. Noguchi” のマークが入っていないものが古いとされています。

ただし実際には、1990年代後半までマークのない個体も一般流通しており、サインの有無だけで年代や価値を一概に判断することはできません。

アンティークウォッチやデニム、スニーカーの世界と同様に、ヴィンテージ家具の分野においても、情報整理や定義の共有がまだ十分とは言えない側面が残っています。

海外オークション市場で感じた、評価と価格のリアル

外国のオークションハウスで、デザイナーズ家具が取引されていると知ったときの衝撃は、今でも忘れられません。
当時、エルモルイス(現フラクタス)の成田さんのブログでその事実を知りました。彼はいまでも、私が尊敬しているディーラーの一人です。

英語を話すこともできず、すぐにオークションハウスへ連絡を取れるような状況でもありませんでしたが、ある時、勢いというよりも軽いノリで、当時所有していたアイテムリストをオークションハウスへ送ってみました。
その結果、両者で合意に至り、ポール・ケアホルムの椅子を出品することになります。

その椅子は無事に落札されました。円高の時代だったこともあり、利益としては雀の涙ほどでしたが、「海外のマーケットで評価された」という事実は、ひとつの目標を達成できたような感覚があり、今でも強く印象に残っています。

私が感じているオークションハウスの特徴は、まず作品の来歴を非常に重視するという点です。
そして、少しでも不明瞭な点があれば、権威ある専門家による判断が加わります。
実際、その権威によって「偽物」と判断された作品を、私自身が所有していたこともあります。──苦笑。

インターネットの発達とともに、海外から出品すること、また落札することの敷居は確実に下がりました。
たとえば、ヨーロッパで希少な椅子が高額で落札されれば、その価格が基準となり、アメリカ市場でもさらに高騰していく。そんな連鎖が当たり前に起きる時代だと感じています。

今後はグローバル化がさらに進み、輸送のハードルも一層下がっていくでしょう。
現時点では、eBayなどの個人間取引と比べると、オークションハウスは手続きも煩雑で敷居が高いのは事実ですが、デザインプロダクトに本気で向き合いたい方にとっては、十分に挑戦する価値のある場だと思います。

2021年も、ポール・ケアホルムやジョージ・ネルソンのアイテムを実際に落札しています。
今後は、オークションハウス代行についても対応していく予定です。出品アイテムの中で、落札を検討している作品がありましたら、気兼ねなくご相談ください。

もし具体的な作品や判断に迷う点があれば、こちらからご連絡ください。

ヴィンテージ家具やデザインプロダクトの価値は、個人の好みだけで決まるものではありません。
どの市場で、どのように評価され、どのような文脈を辿ってきたかによって、その価値は形づくられます。

以下は、名作家具や重要なデザインプロダクトが実際に取引され、価格と評価の基準点として機能してきた主なオークションハウスです。

wright20
PHILLIPS
BRUUN RASMUSSEN
CHRISTIES
Lauritz

世界には、オンライン専門のオークションや地域コミュニティ向けの取引システムなど、さまざまな形態が存在します。

まずは、こうしたオークションハウスを覗いてみるだけでも、現在の評価軸や市場の空気を感じ取ることができるはずです。

ヴィンテージ家具で価値を育てる人たちの共通点

私の大好きなミッドセンチュリーモダンも、大きく分類すると、アメリカ、フランス、イタリア、デンマーク、フィンランド、そして日本に分けられます。近年では、ブラジルのデザインにも注目が集まりはじめています。

日本国内にも、それぞれの分野に精通した専門家はいますが、実際には手探りの部分も少なくありません。「この人は本当にすごい」と感じる人の共通点は、とにかく資料収集に長けていることです。作品集はもちろん、過去に発行された国内外の雑誌やフリーペーパーまで丹念に集め、情報を整理しています。

さらに、重要だと考えるキュレーターや工房、ギャラリストだけでなく、可能であればデザイナー本人に会いに行き、オークションハウスにも一度や二度ではなく足を運んでいます。人間関係があってこそ得られる情報や、融通してもらえる作品がある。そのための地道な積み重ねを、淡々と続けている印象があります。

ヴィンテージ家具による資産形成という考え方を紹介していますが、その前提として大切にしてほしいのは、「この椅子、きれいだな」「このインテリアの雰囲気、好きだな」という、ご自身の素直な感覚です。その気持ちを起点に文脈を追っていくことで、見えてくる世界はよりクリアになります。

好きこそものの上手なれ。
そこから一歩踏み出し、情報を集め、作品を探していけばよいと思います。ただし、インターネット上の情報がすべて正しいとは限りません。その点には注意が必要です。

また、空間をすべてヴィンテージ家具で統一することが、必ずしも現代の暮らしに合うとは限りません。新しいもの、アンティーク、ヴィンテージのデザイナーズ家具に加え、植物や絵画などを織り交ぜながら、ご自身の感覚でコーディネートしていくことで、より豊かなライフスタイルにつながっていくと考えています。

日本におけるヴィンテージ家具市場の変遷

一般的に、1995年にマガジンハウス社から刊行された『BRUTUS』のイームズ特集をきっかけに、日本でもイームズブームが生まれたと言われています。とくに「椅子」に対する関心が一気に高まりました。

私が東京で生活していた90年代末から2000年代後半にかけては、目黒の家具屋通りや青山界隈にも、イームズをはじめとするミッドセンチュリーモダンを扱う店が数多く存在していました。

当時は、個人で海外から輸入して購入する人は今に比べて圧倒的に少なく、雑誌で購入方法を紹介するHOW TO特集が組まれることはあっても、送金や通関のハードルは高かったように記憶しています。

一方で、インターネットを検索すれば、海外のショップやフリーマーケットの様子をブログで紹介しているサイトもあり、価格帯を知ること自体はそれほど難しくありませんでした。

私自身は財布に余裕があったわけではありませんが、それでも椅子が欲しかった。だからこそ、国内の店に足繁く通い、実物を見て購入していたのを覚えています。

その後、北欧ブームがあり、フレンチのブームがあり、そして2020年現在では、モダン家具の文脈を掘り起こす流れの中で、ブラジルの作品を紹介する動きも増えてきました。

1960年代以降の家具ブームの推移については、縁あってさまざまな話を耳にしてきましたが、ここでは話が脱線しますので控えます。

私は、日本人バイヤーの目利きの能力は非常に高いと考えています。デニムブームの火付け役が日本人であったことや、北欧セラミックの評価に日本人バイヤーが深く関わっていたという話を聞くにつけ、その感覚は強まります。結果として、日本国内には質の高い作品が多く輸入されました。世界的に見ても、日本が豊かだった時代背景は無視できない要素だと思います。

あくまで私見であることをご理解ください。
2000年代中盤になると、アメリカのミッドセンチュリーモダンの中でもスーパーレアと呼ばれる作品を除き、専門店は徐々に減少していきました。その一方で、北欧モダンのウェグナーやヤコブセンを中心に扱う店が台頭してきます。また、無名の作家物を「アノニマス」と表記し、価値付けして販売する店も次第に増えていきました。

実際には、北欧家具の価値ある作品の多くは、デザイナーと工房が一体となって制作されたものです。それらと比較すると、アノニマスと呼ばれる家具は、材の質や構造が簡素であるにもかかわらず、高値で販売されているケースも少なくありませんでした。

私はそれを否定するつもりはありませんが、将来的な資産価値という観点では、好ましいとは考えていません。そのため、アノニマス的な作品を購入したことは一度もなく、仕入れたこともありません。

日本人はブームに弱い。私自身も例外ではありません。雑誌に掲載された空気感や雰囲気、モデルルームで使われている家具、有名人がテレビで紹介したアイテムなどは、多くの人の関心を引きます。

そうした影響に加え、日本国内ではヴィンテージ家具の愛好家の住空間が徐々に飽和してきたこともあり(住環境上、多くの椅子を置くことはできません)、流通量は次第に減少していったと考えています。その結果、かつて「目黒の家具屋通り」と呼ばれたエリアも、以前ほどの面影はなくなってきました。

一方で、ヤフオクやメルカリといった個人売買のプラットフォームが身近になったことで、コレクターだけでなく、初めての一脚を探す人も、こうしたインターネットサービスを利用するようになったと感じています。

かつては、店主やスタッフから買い付けのストーリーや思い入れを聞くことも楽しみのひとつでしたが、現在は店舗運営そのものが厳しい時代に入っているとも推測します。

洋服と違い、シーズンごとにセールを行う必要がなく、時間の経過とともに価値が増していく可能性を持つ家具にとって、最大の負担は倉庫費用なのかもしれません。

家具を寝かせているだけでは収益にはつながりません。商品を回転させてこそ、店の運用は成り立つ。その現実も、無視できない要素です。

作品を売却・転売する際に知っておきたい現実

金や株といった証券と異なり、モノには即金性を期待することができません。とくに家具は、専門店自体が減少している現状もあり、気軽に買い取りを依頼できる先は限られています。相場を把握しないまま売却すれば、二束三文で買い叩かれてしまう可能性も高いでしょう。

そうならないためにも、所有している家具の価値を日常的に確認することが重要です。ネットオークションの落札結果を追ったり、近年大きく精度が向上しているGoogle翻訳を活用し、海外向けに販売するという選択肢を検討することも、今後は現実的になっていくと思います。

何事も他人任せにせず、自分の頭で考え、行動を積み重ねていく。その過程そのものが、ヴィンテージ家具の価値を理解し、結果的に高めていくことにつながると考えています。

なお、売却価格は「相場」そのものよりも、状態・タイミング・販路によって決まります。
同じモデルであっても、修復内容やオリジナル部材の有無、配送条件によって、実勢価格は大きく変わります。

日本で「ヴィンテージ」となる30年、その先に残る家具

日本は高度経済成長を経て、バブル崩壊からおよそ30年が経過しました。福岡には、かつて世界を代表するインテリアのデパート「NIC」があり、1960年代からイームズをはじめとする北欧家具を扱っていた歴史があります。そうした話を見聞きするたびに、当時販売された家具の来歴にも自然と関心が向きます。

かつて豊かだった日本には、ヴィンテージと呼ばれるまでの30年という時間を経て熟成されたデザイナーズ家具が数多く存在しています。それらは個人向けだけでなく、企業や公共施設にも納められてきました。

一方で、近年はヴィンテージ家具を専門に扱う店舗も減少し、当時購入した方々が処分に困っているという話を耳にする機会も増えています。リサイクルショップに引き取られるケースもありますが、その評価は決して高いものとは言えません。

昨今のデザインプロダクトの価格高騰を背景に、転売目的で収集しながら愛用している方もいます。それは結果として、価値ある作品を次世代につなぐ行為でもあり、ひとつの健全な循環だとも感じています。

この記事を読み終え、ヴィンテージの魅力に少しでも興味が湧いた方は、まずは一つからでも構いません。価格や評価よりも、ご自身の気持ちを大切にしながら、家具との出会いを楽しんで探してみてください。これまで感じたことのなかった景色や価値観に触れられるはずです。

本記事は今後も大切に管理し、状況に応じてアップデートしていく予定です。ご意見やご質問がありましたら、お気軽にお寄せください。

価値ある作品が、次の世代の所有者へと、大切に引き継がれていくことを願っています。


関連:ヴィンテージ家具を“価値”として捉えるための3本。

この記事で触れた「価値」「時間」「文脈」を、もう一段だけ整理しておきたい方へ。
以下は、購入前の判断軸を静かに深めるためのアンカー記事です。

あなたの人生を彩るアルバム──家具という、時間と記憶の資産
時間がつくる美しさ──経年美化とモノ選びのデザイン哲学
家具の価値は“時間”で育つ:ヴィンテージを選ぶ理由と静かな資産という考え方

参考文献
PENオンライン「東京に現れた、ジャン・プルーヴェのすべて。


この記事について

本記事は、選品舎/Helvetica を運営する大西健が執筆しています。
ヴィンテージ家具・古書の選品、販売、記録を通じて、
「残るもの/残らないもの」の判断基準を実務の中で整理しています。


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