アルベルト・ジャコメッティの生誕100周年を記念し、チューリッヒ美術館とニューヨーク近代美術館で開催された展覧会にあわせて刊行された公式カタログです。
細く引き伸ばされた人物像で知られるジャコメッティですが、本書が扱うのは、完成された彫刻作品だけではありません。
初期の素描や絵画、シュルレアリスム期の実験的な作品、後年の人物彫刻に至るまで、その制作の変遷を包括的に収録しています。
監修は、ジャコメッティ研究で知られるChristian Klemm。Anne Umland、Tobia Bezzolaらによる論考を収め、作品図版と研究的な視点の双方から、20世紀美術におけるジャコメッティの位置を検証しています。
アフリカ、オセアニア、キクラデス文化など、非西洋圏の造形との関係にも触れた、資料性の高い一冊です。
英文。ソフトカバー。
特徴
本書の特徴は、ジャコメッティの代表的な人物彫刻だけに焦点を当てず、その造形が生まれるまでの過程を広く収録している点にあります。
平面作品、初期彫刻、シュルレアリスム期のオブジェ、成熟期の人物像を同じ流れの中で見ることで、細長い人体表現が単なる様式ではなく、長い試行錯誤の結果であったことが分かります。
作品の形態的な変化だけでなく、古代美術や非西洋美術から受けた影響、同時代の芸術家との関係も論じられており、ジャコメッティを単独の彫刻家としてではなく、20世紀美術史の中で捉えるための内容となっています。
この本が残した視点
- 人物の輪郭を削ぎ落とすことで、存在そのものの強度が現れること
- 彫刻は量感だけでなく、距離や空間によって成立すること
- 完成された様式の背後には、絵画、素描、オブジェを横断する長い実験があること
- 異なる文化圏の造形が、近代美術の形成に深く関与していたこと
書誌情報
・タイトル:Alberto Giacometti
・監修:Christian Klemm
・寄稿:Anne Umland、Tobia Bezzolaほか
・出版社:The Museum of Modern Art, New York
・刊行年:2001年
・装丁:ソフトカバー
・サイズ:約29.7 × 24cm
・ページ数:296ページ
・言語:英語
・ISBN:0870703404
状態
中古品。
カバーにスレ、軽微な傷みがあります。
本体は経年相応の状態です。
小口、本文ともに概ね良好です。
鑑賞および通読に大きな支障はありません。
迎える理由
選定理由:
ジャコメッティの代表作を紹介するだけでなく、初期から晩年までの制作を体系的に確認できるため選びました。
比較した視点:
一般的な作品集よりも展覧会図録としての研究性が高く、彫刻、絵画、素描、文化的背景を横断して収録している点を重視しました。
判断の結論:
ジャコメッティの細長い人物像を、単なる象徴的イメージとしてではなく、制作の変遷と美術史的背景から理解するために残す価値のある一冊です。
作品を見るための図録であると同時に、20世紀の彫刻が、身体と空間をどのように捉え直したのかを考えるための資料でもあります。