カート
カートが空です
椅子は、身体を支える道具であると同時に、時代の思想を映す小さな建築でもあります。
本書『椅子の美術館』は、埼玉県立近代美術館が1989年に刊行した展覧会図録です。
ミヒャエル・トーネットのロッキングチェアやステッキチェア、チャールズ・レニー・マッキントッシュのハイバックチェアなど、近代デザイン史を形づくった椅子を収録。
単に名作椅子を並べるだけではなく、「描かれた椅子」「使い方いろいろ」といった章を通して、椅子が人の身体や空間、生活のなかでどのように存在してきたのかを紹介しています。
横長の判型を生かした誌面には、作品写真、解説、関係年表、作品索引を掲載。79ページというコンパクトな構成ながら、椅子の造形と歴史を俯瞰できる内容です。
表紙を飾る赤い椅子の強い輪郭も印象的で、資料としてだけでなく、一冊のデザイン物としても残しておきたい図録です。
本書の特徴は、椅子を「著名なデザイナーによる作品」としてだけではなく、人と空間を結ぶ道具として捉えている点にあります。
曲木、木材、金属などの素材や構造の変化に加え、椅子の座り方、組み合わせ方、建築空間との関係までを図版と文章によって解説。
収録内容には、以下のような項目が含まれています。
・ミヒャエル・トーネットのロッキングチェア、ステッキチェア・チャールズ・レニー・マッキントッシュのハイバックチェア・近代から現代までの椅子の変遷・描かれた椅子・使い方いろいろ・作品索引・関係年表
椅子の名称やデザイナーを確認する資料としても、デザイン史への入口としても使える一冊です。
椅子の価値は、造形の美しさだけでは決まりません。
どのような身体を想定し、どのような姿勢を生み、どのような空間に置かれるのか。椅子を見ることは、その時代の生活や技術、人間観を見ることでもあります。
本書は、椅子を鑑賞の対象へと引き上げながら、あくまで人が使う道具として捉えています。
名作を知るための図録というより、椅子を見る基準を増やすための資料です。
・タイトル:椅子の美術館・著者・編者:埼玉県立近代美術館 編・出版社:埼玉県立近代美術館・刊行年:1989年・装丁:ソフトカバー・サイズ:約15 × 26cm・ページ数:79ページ・付録:なし
表紙のー角に軽い折れがあります。カバーおよび本体、小口に経年によるヤケが見られます。
本文には、通読や図版鑑賞を妨げる目立ったダメージはありません。
刊行年を考慮すると、一般的な経年状態です。詳細は掲載写真をご確認ください。
選定理由:椅子の歴史を名作一覧として処理せず、身体、用途、空間との関係から編集した展覧会図録であるため。
比較した視点:大型の椅子デザイン資料に比べて情報量は限定されますが、日本語で読みやすく、作品写真、解説、年表が簡潔にまとまっています。
判断の結論:専門書ほど重くなく、一般向けのデザイン入門書ほど浅くない。椅子を選ぶ人、扱う人、見る人の手元に置く資料として残す価値があります。
家具を所有する前に、まず椅子を見る目を整える。そのための一冊です。
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