カート
カートが空です
長年イタリア・ミラノを拠点に活動した彫刻家、豊福知徳(1925–2019)の作品集です。
1974年、ミラノのGalleria del Naviglioと深い関係を持つEdizioni del Naviglioより刊行。美術評論家・針生一郎による序文とともに、豊福が1960年代から70年代にかけて制作した彫刻作品を豊富な図版で収録しています。
豊福知徳は1960年、第30回ヴェネツィア・ビエンナーレに日本代表として出品したことを契機に渡伊し、その後ミラノへ移住しました。
厚みのある木材に楕円形の孔を両面から穿つ独自の彫刻によって、光や風を作品の内部へ取り込みながら、物質と空間、虚と実の関係を探究しました。
日本の木彫という背景を持ちながら、ルーチョ・フォンタナやエンリコ・カステッラーニらが活動した戦後イタリア美術の環境に身を置き、独自の抽象表現を確立した作家。その形成期と代表作を知るための重要なモノグラフです。
豊福知徳の作品では、木材に開けられた孔は、単なる装飾や欠損として扱われていません。
彫刻の内部へ光を通し、周囲の空気や背景を作品の一部として取り込むための構造として存在しています。
重量を持つ木の塊と、そこに生じた空洞。触れることのできる物質と、形を持たない空間。
相反する要素を一つの彫刻のなかに成立させた豊福の造形思想を、正面・側面・細部を捉えた作品写真から読み取ることができます。
日本語・英語・イタリア語を併記した国際的な構成も、ミラノを拠点に評価を確立していった豊福の立ち位置を伝えています。
豊福知徳の彫刻は、物質を削って形を作るだけではありません。
木を穿つことで、そこに存在していなかった空間を生み出しています。
彫刻を見るという行為を、表面を見ることから、その奥にある空洞や、通り抜ける光を見ることへと変えた仕事です。
日本人作家の海外活動を記録した資料としてだけでなく、戦後彫刻における「物質と空間」という問題を考えるための一冊として残ります。
・タイトル:Tomonori Toyofuku・作家:豊福知徳・出版社:Edizioni del Naviglio・刊行年:1974年・言語:日本語、英語、イタリア語・装丁:ハードカバー、ダストジャケット・サイズ:約287 × 287mm・ページ数:97ページ
概ね良好です。
選定理由:豊福知徳の1960〜70年代の活動を、同時代のミラノで刊行された資料から確認できるため。
比較した視点:後年の展覧会図録ではなく、作家が国際的な活動を展開していた時期に刊行されたモノグラフであることを重視しました。
判断の結論:豊福知徳の作品を知るためだけでなく、日本の戦後彫刻とイタリア美術の接点を記録した資料として、蔵書に残す価値があります。
作品写真の美しさだけで終わらず、彫刻における空洞、光、物質の関係を静かに考え続けられる一冊です。
ぜひ、長く手元に置く蔵書として迎えていただきたい作品集です。
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