「揃える」ことでしか見えない——『new furniture neue mobel muebles modernos(全11巻)』を集める意味を、判断材料として手元に残す
この11巻は、モダン家具を「好き」で終わらせず、体系として理解するための資料です。
集めるのは難しい。だからこそ、揃った瞬間に価値が立ち上がります。
この記事では、何が載っていて、なぜ揃わないのか、どう集めると失敗しにくいのかを、 「揃えるかどうか」を判断するための実務情報として整理します。
このシリーズは何か(11巻の正体)
『new furniture / neue möbel / muebles modernos』は、1960年代のモダン家具を大量に収録した、 いわば家具のカタログ兼・教科書です。
「名作だけを鑑賞する本」ではなく、椅子・ソファ・テーブル・ベッド・オフィス家具まで、 当時のデザインと市場を横断的に見渡すための資料として強い。
書誌情報
- 編集:Gert Hatje
- 出版社:arthur niggli
- 発行年:1966年(前後)
- 構成:全11巻
なぜ「揃う」と価値が変わるのか
このシリーズの価値は、1冊単位の情報量だけでは決まりません。
全巻が揃ったときに初めて、時代の全体像(家具・メーカー・デザイナーの広がり)が立ち上がる。
その結果、読む人の中で「趣味」が「理解」に変わり、理解が「選定基準」になります。
揃わない理由(現場の実感)
- 前半巻(特に1〜4巻)が出ない:市場で見かけない期間が長い
- 揃える人が少ない:途中で諦める人が多く、セットが残りにくい
- 出所が分散:世界中に散っているため、集める行為そのものが難易度になる
中身で得られること(読み方のコツ)
このシリーズが強いのは、単に「名作が載っている」からではなく、 当時の“選ばれ方”が分かるからです。
復刻されなかったモデル、メーカーの思想、写真の文脈——そういうものが静かに残っています。
読み方のおすすめ(3段階)
- 1周目:直感でページをめくる(良いと思う形をマーキング)
- 2周目:メーカー/デザイナー名を拾う(“知らない名前”が財産)
- 3周目:自分の選定基準に落とす(「残る形」「再現できない構造」を言語化)
集め方(失敗しない手順)
「運良く見つける」では揃いません。
揃えるには、情報と段取りを持ったほうが早い。ここでは再現性のある集め方を、現実的にまとめます。
集める手順(現実的な型)
- Step 1:まず8巻以降を確保(市場に出やすく、手元の芯になる)
- Step 2:欠け巻のリストを作る(1〜4巻の優先度を上げる)
- Step 3:海外も含めて探索範囲を広げる(言語の壁は翻訳で突破できる)
- Step 4:送料・関税・梱包を前提にする(本体価格だけで判断しない)
- Step 5:届いたら状態と版の確認(揃えるほど、整合性が重要になる)
よくある落とし穴
失敗の典型
- 「安いから買う」:後で版や状態が揃わず、揃えるほど苦しくなる
- 「欠け巻を後回し」:前半巻は本当に出ない。後回しにした時点で難易度が上がる
- 「途中で妥協する」:歯抜けは精神的に効く。揃えるなら最初から覚悟を決める
向いている人・向いていない人
向いている人
- モダン家具を「所有」ではなく「理解」したい
- 復刻品だけでは物足りない(当時の空気まで見たい)
- 家具の選定・買付・編集を仕事にしている/したい
向いていない人
- 名作だけを“眺めたい”
- 短時間で結論だけ欲しい(この本は時間を要求する)
- 「揃える」ことにストレスが強い
見てみたい・集めたい方へ(ご案内)
このシリーズは、手元に置いた瞬間から「資料」になります。
そして、揃える過程そのものが、モダン家具の見え方を変えます。
「集めるべきかどうか」で迷っている段階でも構いません。
もし「中身を一度見てみたい」、あるいは「揃える前提で相談したい」という方は、 状況(欲しい巻/現在の所持巻)を添えてご連絡ください。
揃え方の筋が立てば、無駄な遠回りは減らせます。
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※本シリーズを「資料」として扱うための、視点を補助する記事です。
この記事について
本記事は、選品舎/Helvetica を運営する大西健が執筆しています。
ヴィンテージ家具・古書の選品、販売、記録を通じて、
「残るもの/残らないもの」の判断基準を実務の中で整理しています。











